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国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
おすすめ度 4.5 4.5 (59件のカスタマーレビュー)
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62人中58人が「参考になった」と投票
★★★★★ 知性ある真の愛国者・佐藤優氏, 2009-02-25, ID:A3Q519QL97K8ZVさん

佐藤優氏は外務省のノンキャリアでロシア大使館での仕事に従事した後、日本に戻って特殊情報(いわゆるインテリジェンス)担当となる。

外交というものはあくまで国益を追求すべきものだから、必ずしも正々堂々がいい訳ではない。北方領土も、現状を踏まえて且つ相手国たるロシアが本質的に求めるものは何か、を追求しつつ、政治と経済と組み合わせて交渉するのが正しい。

佐藤氏はインテリジェンスの内でも、それまでの経験を活かしたロシア、東欧の仕事が主となる。そしてロシアといえば北海道出身の議員、鈴木宗男氏。「ムネオ・ハウス」なんかで有名になった人。結局佐藤優氏は盟友ともいえる鈴木議員に連座する形で起訴された。

僕はこの本を読むまで鈴木宗男氏は利権をむさぼる汚い奴と思っていた。そして連座した佐藤優氏も典型的な世の中の常識からずれた外務官僚と思っていたが、この本を読んで、それが誰か及びマスコミによって作り上げられた歪んだイメージで、真実はこの本に書かれていることの方が近いと感じた。鈴木氏は利権をむさぼる人ではない。また佐藤氏担当検事の西村氏も指摘していたように、鈴木氏はその政治力、押しの強さ、理念を実現できる強さから多欲な他人、たとえば田中真紀子から嫉妬を受け、しかも鈴木氏自身の欲が少ない為、そのような嫉妬自体に気がつかない。従ってその地位から引きずり下ろされたという。

鈴木氏は立派な政治家だ。そして鈴木氏とタッグを組んで日本の国益の為に頑張った佐藤氏も立派だ。二人とも真の日本男児といえる。

一方の魑魅魍魎、事なかれ主義、必要な時には鈴木氏に土下座してまで従う姿勢をとりながら、いざ鈴木氏が訴追されると、「鈴木氏の強いプレッシャーによってあんなこと、こんなことをさせられた」と掌を返したようなことをする外務官僚たちとは対照的だ。

僕が興味深かったのは検察官同士のこの会話だ。「この国=日本の識字率は5%以下だからね。新聞に一片の真実が出ているもそれを読むのは5%。残り95%の世論はワイドショーと週刊誌によって形成されるのだ」。

鈴木氏と佐藤氏とが国策捜査の対象になったのは、「時代のけじめ」のためだと(検察官が)いうが、それを望んだのは僕ら一般国民の空気だ。マスコミのもたらす表面づらをなぞった情報でもって二人を断罪しようとしたから特捜が動いたのだ。

その意味ではワイドショーと週刊誌によって物事を判断する低俗な僕らが彼らを獄に追いやったともいえる。

僕らは猛烈に反省しなければなるまい。

29人中27人が「参考になった」と投票
★★★★★ 曝け出された国策捜査の実態と目的, 2008-08-07, ID:A21RS6B045DKF7さん

情報専門家として国家の権力を知り尽くした著者は、「国策捜査に巻き込まれた以上、勝ち目は無い」と考える。その上で、検察との心理ゲームにおいて、事実と異なる供述をすることなく、被害の最小化を図る筆者の胆力が、著者の情報専門家としてのキャリアや美学を良くあらわしている。
 検察側が用意した穴(検察が構築したストーリー)を著者が選択するシーンを読むと、「検察=正義の味方」といナイーブなイメージを持っていたことを反省するとともに、それを助長している記者クラブに代表されるマスコミの問題点についても考えさせられる。なぜ、マスコミは、裏も取らずに、検察からのリーク情報を垂れ流しにするのか?公務員である検察が捜査・取調べ情報をリークし、世論を操作することは許されないはずだ。
今回の国策捜査の目的や背景に対する著者の見立てや、田中真紀子が外相となってからの外務省の混乱に関する記述も非常に興味深い。また、川上弘美の解説も秀逸である。
今後のニュースの読み方を変える、価値のある本である。
60人中51人が「参考になった」と投票
★★★★☆ 情報屋, 2007-11-11, ID:A1YOB4W8YG7UG8さん

ムネオ事件の内幕を赤裸々に綴っただけでも超一級の歴史資料。「国策捜査」の中身を知ると、あのマスコミのバッシングは何だったのかがよくわかります。そういえば、あのころ世の中おかしかった。小泉旋風と構造改革の熱が冷めた今、残ったのは著者が指摘しているナショナリズムとワイドショー政治だけなのかと思うと暗澹たる思いです。真面目にものを考えている人はどこにいるのだろうか。

読みどころは、拘置所に入ってからの検察官とのやりとりだと私は思います。誰もが拘禁症状に苦しみ、外に出たいと思う塀の中で、妙に生き生きしているのは、著者が生粋の情報屋だからです。情報屋にとって、情報そのものは問題ではない。情報のやりとり自体が問題なので、情報が入ってこない塀の中では、検事とやりとりするしかない。そこから意味を見出すことこそ、情報屋の情報屋たるゆえんです。情報の雑音も多い外部の世界から隔離され、一点にのみ精神を集中できる喜び。この部分の文章には、そうした喜びがあふれています。

驚くべき記憶力によって可能になった検事とのやりとりの再現によって、あの時なにが起こっていたのかという真実を知るとともに、喜びにあふれた文章を読めるという、読書好きならたまらない魅惑の本です。
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★★★★★ 知識欲を掻き立てられる本です, 2008-04-12, ID:A21PPR3OBY4L9Zさん

著者の本を読んだのはこの本が初めてだったが、詳細な事象に基づく淡々とした文章展開で、著者の知性の高さが感じられ、一気に読み終えた。政治とその裏で権力に平伏し自己保身に走る官僚の姿をありありと想像させられた。

田中真紀子が引き起こした外務省での騒動、鈴木宗男との確執、外務大臣更迭に至るまでの経緯など、一般に報じられていない内部事情を公開しており、こういう事実がもっと国民の知るところになるべきだと感じる。

日本国民は人気(にんき)ばかりで政治家を選ぶ傾向が多々あるが、あまりにも政治音痴過ぎるのもどうかと考えさせられる。「出る杭は打つ」という暗黙の風潮、成功者や目立ちすぎるものを妬む社会、日本が政治・経済の成長を停滞させている要因であり、将来を考えるとなんだか日本という国に対して悲観的になりました。私自身、海外生活が長くなりましたが、本帰国することは当面ないですね。

とにかく、読んで後悔する本ではありません。一読の価値はあります。

25人中20人が「参考になった」と投票
★★★★★ 国策捜査とはー , 2007-12-17, ID:A26S5SACXPEQCJさん

“時代にけじめをつけるために政府は国策捜査を必要とし、ケインズ型路線からハイエク型路線へ日本の政治が移行するとき、その境界線上にいる鈴木宗男が葬り去られるしかなかった。 その渦中にいた自分も−” 実にショッキングな内容でした。 恥ずかしながら国策捜査なるものが何かも知りませんでした。さらに歴史上それが何度も行われてきたということも。

佐藤氏の考察が真実なのかどうかは私には知る由もありませんが、少なくとも当事者でありながら、獄中でこのような冷静沈着な考察をすることができる佐藤氏という人物にむしろ驚嘆してしまいます。 それに読んでいて面白いのは、大物政治家にせよ、検察官にせよ、ロシア政府の高官にせよ、佐藤氏と付き合いのある人達は、みなそれぞれ一本筋の通った人物ばかりのように見受けられるのですが、これはむしろ佐藤氏と付き合う人達自身、彼の前では誠実にならざるを得ないから−というのが理由であるような気がします。 それは佐藤氏が、一個の人間としていかに誠実に生きるか、日本の外務省員としてどうすれば良い仕事が出来るか、そして世界の平和のために何が出来るか−を、ギリギリまで自分に問うてから行動するが故なのではないかと推察されます。 かなり詳細な記録書ですが、私のような素人は細かい説明は多少飛ばし読みしても、そういったものを感じ取れただけでも収穫でした。



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